Column

世界の海辺

第7回
タヒチの島々へ
その2

矢部 洋一 [ヤベヨウイチ]

1957年11月11日生まれ。海をフィールドとしてヨット、ボートの写真撮影を中心に、国際的に活躍するフォトグラファー。写真だけでなく、記者、編集、翻訳などの仕事を精力的にこなす。
●株式会社 舵社・チーフフォトグラファー
●有限会社 オフィスイレブン代表取締役
●英国王立オーシャンレーシングクラブ誌「シーホース」特約記者

動く水上の5スターホテル、ティア・モアナ号(全長230フィート)は、ボラボラ島を起点にしている。ゲストは国際線の着くタヒチ島パペエテから小型の飛行機を乗り継いでボラボラへまず向かう。朝、ボラボラの空港に着くと、ティア・モアナの美男クルーがにこやかな笑顔で客を出迎え、目の前にある小さなビーチへと案内をしてくれる。ビーチに張られたタープの下には、きりりと冷えたシャンペンが用意され、長い機上の旅で朦朧とした頭をすっきりと(あるいはさらに朦朧と)させる趣向になっている。ひとたびタープの外に出れば、南洋の太陽はすでに力強く輝き、積乱雲は元気にむくむくと湧き、ボラボラ島の緑は深く濃くくっきりと迫り、海は透明に青く輝いている。ああ、タヒチに来たなあと感慨を強くして、充満する自然の気を胸にいっぱい吸い込む。息を吐けば体中が洗われるようだ。これからの1週間をこの空気の中で、しかも船上で過ごせると思うだけで心が浮き立ってくる。

シャンペンのあとは、小さなボートでティア・モアナ号に乗り込む。ボラボラ島のラグーンに錨を降ろした真っ白なティア・モアナ号の後部デッキにはクルーが勢ぞろいして客を迎える。甘い香りのレイが首にかけられ、冷たいおしぼりが手渡される。フロントデスクでチェックインの簡単なサインをし、客室へ。部屋は窓が大きく、明るく清潔で広さも十分だ。品のいい調度品で整えられたダイニングルーム、バー・ラウンジ、ライブラリー、ジムなどを見て回り、デッキへ出る。3層から成るデッキの最上階は、ジャクジーとバーを中心に据えた広々としたチーク張りのサンデッキになっている。どの空間もひたすら気持ちがいい。

チェックインのあと、初日の午後はボラボラのラグーンに錨を降ろしたままゆったりと時は流れる。長旅の疲れをまずは癒すのである。夜、客が寝静まる頃に、ティア・モアナは錨を揚げて動き出す。最初の目的地、タハア島に向かうためだ。客の滞在中、船の移動は夜行われる。翌日の早朝までには次なる島に到着をし、錨泊をすませてしまう。客は朝から日暮れまでたっぷりと島々で遊ぶことができるというわけだ。

ティア・モアナ号が1週間で巡るコースは、ボラボラ島(月曜日)~タハア島(火曜日)~ライアテア島(水曜日)~フアヒネ島(木曜日)~ライアテア島(金曜日)~ボラボラ島(土曜~日曜日)である。毎日、客を飽きさせないいろいろなプログラムが組まれ、水中から山の上まで、タヒチの島々を文字通り満喫できる。

今回はなんだか、宣伝のようになってしまったが、他意はない。ティア・モアナ号でタヒチの島々を巡る旅は唯一無二の旅である。料金は決して安くはない(2005年の価格で2人部屋1人あたりの料金は1週間で3,850ユーロ、シングルユースは6,930ユーロ)。しかしその価値は十分にある。可能なら、ぜひ経験してみてください。

2006年1月10日

地図

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*問合せ先など詳細は舵社刊「シードリーム」創刊号(2005年6月30日発行)をご覧ください。

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ティア・モアナ号のサンデッキ

モツ(ラグーンの小島)やビーチに上陸するときにはかならず屋外バーが設置される

ラグーンの中で水中散歩。サメやエイの餌付けなどアトラクションも楽しい

ビーチの木陰でヒーリング・マッサージ

秘密のビーチで、足を海につけながら朝食を

タヒチには考古学上重要な遺跡が多い。日本の考古学者、篠遠教授がその発掘復元に大きな業績を残している