Column

世界の海辺

第24回
キューバの海
その1

矢部 洋一 [ヤベヨウイチ]

1957年11月11日生まれ。海をフィールドとしてヨット、ボートの写真撮影を中心に、国際的に活躍するフォトグラファー。写真だけでなく、記者、編集、翻訳などの仕事を精力的にこなす。
●株式会社 舵社・チーフフォトグラファー
●有限会社 オフィスイレブン代表取締役
●英国王立オーシャンレーシングクラブ誌「シーホース」特約記者

第23回から1年以上も間をあけてしまい、失礼をしました。この間、世界のいろいろな海へ多くの旅を重ねました。今回以降はその最近の旅の中から、とびきりの場所をご紹介します。

まずはキューバから。きっかけは、エア・カナダ(航空会社)が日本発のハバナ線を新たに売り出したことだった。これを使うと、成田空港からトロント(カナダ)を経由してハバナまで、およそ16時間半で着く。トロントでの乗り継ぎも約1時間半とスムースで、キューバがぐっと日本に近くなったという。

またキューバ政府の観光局は、日本からの観光客をもっと増やしたい、知られざるキューバの魅力をもっと知ってもらいたいと常に願っている。それで取材の旅が実現した。

キューバという国についての私の知識は、ずいぶん乏しかったが、食の方では以前からずいぶん世話になっていた。

以前、米国のマイアミに毎年のように出かけていたことがある。マイアミには亡命キューバ人の大きなコミュニティがあって、キューバ料理の食堂が数多い。カフェコンレチェ(ミルクコーヒー)と絞りたてのオレンジジュースとバターをたっぷり塗ったキューバン・トーストは毎朝のように、煮豆と白米と揚げバナナ、牛テールの煮込みや海老のガーリックソース炒めなどは夕飯によく食べた。そこは、質素だけれど温かみがあってほっとする食事にありつけるマイアミでは数少ない場所だった。

ほかに知っていたことといえば、ハバナクラブというラム酒の7年ものがとても美味しいこと、映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」で見た町の風景と人々の笑顔がなんとも素敵だったこと。海に関しては、キューバが大きな島で、カリブ海の北縁に東西に長く存在感をもって位置していること、島の北側はメキシコ湾と大西洋に、南側はカリブ海に面していること、ヘミングウェイがそこに家とボートを持ち、「老人と海」や「海流の中の島々」を創作したこと、まあそのくらいだ。

キューバを海から見たいと調べていたら、7泊8日で本島南西沿岸の島々をめぐる“乗り合い”チャーターヨット「キューバ・ドリーム」のキャビンに運よく一室空きが見つかった。(つづく)

2012年7月18日


大きな地図で見る

写真をクリックすると拡大してご覧になれます

キューバ本島の南西に連なるカナレオス諸島ロザリオ島のビーチ

ドリーム・ヨットチャーター社の乗り合いチャーターヨット「キューバ・ドリーム」

透明度が高く美しいカナレオス諸島のサンゴ礁の海

キューバ本島南側にあるシエンフエゴスのマリーナ

シエンフエゴスのヨットチャーター会社事務所棟。2社が入っている

カナレオス諸島ラルゴ島にあるドルフィン・センター。イルカと泳げる