Column

世界の海辺

第18回
住みたい土地は? そして米国西海岸
ワシントン州ピュージェット・サウンド その1

矢部 洋一 [ヤベヨウイチ]

1957年11月11日生まれ。海をフィールドとしてヨット、ボートの写真撮影を中心に、国際的に活躍するフォトグラファー。写真だけでなく、記者、編集、翻訳などの仕事を精力的にこなす。
●株式会社 舵社・チーフフォトグラファー
●有限会社 オフィスイレブン代表取締役
●英国王立オーシャンレーシングクラブ誌「シーホース」特約記者

しばらく間があいてしまいました。ごめんなさい。

今頃なんだ、と言われてしまうだろうが、今年(2009年)7月末に大海酒造の故郷、鹿屋で参加させていただいた海の日の宴は、まったくもって楽しい会だった。土地よし、気風よし、食事よし、そしてもちろんお酒よし。家内ともども、心から楽しませていただいた。大変に遅ればせながら、この場を借りて皆様に御礼申し上げます。

短い滞在ながら、念願の訪問がかなった鹿屋は住むにも良さそうだなあ、と思わせてくれる土地だった。よく聞かれる質問のひとつに、住むとしたらどの国のどの町がいいか、というのがある。住みよい場所の好みはそれこそ千差万別だが、私の場合は、やはり海に近く、後背は豊かな緑に抱かれ、温暖で、水の良いところ、というのが理想の条件だ。だから、鹿屋はまさに条件にぴったり。

では、外国ならどこか。すぐに思いつくのは、ハワイ諸島マウイ島ハレアカラ山の西の麓。かの地では「アップカントリー」と呼ばれているあたりだ。ハワイでありながら、ちょっと標高の高いその一帯は、まるで高原のように爽やか。マウイオニオンという甘くおいしい玉ねぎが作られ、ラベンダーの花が咲き乱れる。しかし車で数十分も走れば、そこはもう南国ハワイ。太平洋の青い海が眼前に広がる、という具合だ。

続いて思い浮かぶのは、ニュージーランド北島オークランドのすぐ沖に浮かぶワイヘキ島。この島には葡萄畑やオリーブの畑がゆるやかな起伏の丘陵に広がり、多くの優れたワイナリーやオリーブオイルのメーカーが存在する。空気のおいしい、のんびりとした美しい小島だ。オークランドという大きな町へフェリーで30分ちょっとで行けるというのも便利でいい。

3番目は、アメリカ・ワシントン州シアトルの沖に浮かぶベインブリッジ島だ。なんだか島ばかりだ。冬は寒くて雨が多いというのが難点ではあるが、大都市シアトルのすぐ目の前にあって、緑の豊かなまったくの別天地がそこにある。友人の米国人カメラマンがこの島に住んでいる。森の中に佇む彼の家の庭には洋ナシやりんごの木があって、野生の鹿なども出没する。母屋とは別に簡素な小屋が建ち、それが彼のスタジオとなっている。なんともうらやましすぎるではないか。

シアトルは、米国北西岸の港町であるが、地図を見ても分かるように、ピュージェット・サウンドという深く、入り組んだ入り江の奥に位置している。ベインブリッジ島はこの入り江にいくつも浮かぶ島のひとつだ。

次回も、このピュージェット・サウンドの魅力をご紹介したい。まずは、シアトル界隈の写真からご覧下さい。(つづく

2009年10月13日


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マウイ島アップカントリーの家。空高く花咲き乱れ、南の島の高原は理想郷のひとつ

マウイ島アップカントリーから望む眼下の風景。遠くに見える煙は山火事によるもの

ニュージーランド北島ハウラキ湾に浮かぶワイヘキ島。この湾にオークランドからのフェリーが着く

シアトルのフィッシャーメンズ・ターミナルでは、機能美溢れる魅力的な漁船を見ることができる。これはアラスカへ鮭漁に行く船。うしろに作業支援ボートを積んでいる

シアトル中心部に近いユニオン湖には、フローティング・ハウスが浮いている。新築はもう許されていないため、プレミアムつきで売買されているそうだ

これもユニオン湖のフローティング・ハウス。ウッドデッキに小さなヨットを置いて、あるいは家の横に船を係留して、とまあ理想的な環境だ。こんな事務所が欲しい

シアトルと言えばボーイング社。航空機博物館もとても面白い。私は水上飛行機の熱烈なファンでありまして、もう興奮の極みだ。波の穏やかな内水面の多い、このエリアからカナダ、アラスカにかけては、水上飛行機が大活躍をしている

なんだか分かりますか。そう、ボートハウスです。厳しい冬の天候から船を守るために、小さいボートはこのようにして保管されている